
冒険の書を書き終えた主人公は、ほっとした表情で席に座っていました。
現在地も分かった。
冒険の地図も描いた。
心のモンスターとも向き合った。
勇者の誓いも立てた。
攻略本も完成した。
冒険のしおりも手にした。
これで、すべての準備は整いました。
主人公は笑顔で言います。
「これで、もう勇者ですね!」
すると虎のマスターは、優しく首を横に振りました。
そして酒場の奥にある一枚の扉を開きます。
扉の向こうには、今まで見たことのない部屋が広がっていました。
本棚にはたくさんの魔法書。
壁には練習用の道具。
部屋の入口には、こう書かれています。
『魔法の練習部屋』
主人公は目を輝かせました。
「ここでは何をするんですか?」
虎のマスターは、一冊の本を差し出します。
表紙には金色の文字で、
『勇者の魔法書』
と書かれていました。
魔法は、知っているだけでは使えない。

主人公はページをめくります。
そこには、たくさんの魔法の名前が並んでいました。
スクルト。
バリア。
マホカンタ。
ホイミ。
エール。
ルーラ。
主人公は嬉しそうに言いました。
「これで全部覚えました!」
虎のマスターは微笑みます。
「いや、まだ覚えてはいない。」
主人公は驚きます。
「本を読んだのにですか?」
虎のマスターは静かに答えました。
「魔法は、読んだだけでは使えない。」
「何度も練習して、人生の中で自然に使えるようになって、初めて君の魔法になるんだ。」
人生には、たくさんの魔法がある。
現実の世界に、本当に炎を出す魔法はありません。
でも、人生を変える魔法はあります。
落ち込んだ時に、自分を立て直す魔法。
人の言葉に振り回されない魔法。
仲間を勇気づける魔法。
環境を変えて、新しい一歩を踏み出す魔法。
勇者養成講座で学ぶ魔法は、どれも現実の人生で使える魔法です。
そして、それらは特別な才能ではありません。
誰でも練習すれば、少しずつ身につけることができます。
魔法は、人生で使えてこそ意味がある。

虎のマスターは最後にこう言いました。
「魔法は、酒場の中だけで使うものじゃない。」
「毎日の人生で使えるようになってこそ、本当の魔法なんだ。」
主人公は勇者の魔法書を胸に抱き、ゆっくりとうなずきました。
これから覚える魔法は、モンスターを倒すためのものではありません。
人生をもっと自分らしく生きるための魔法です。
そして今日から、その練習が始まります。
次回予告
次回はいよいよ、勇者が最初に覚える魔法。
「スクルト」
守ることは、弱さではありません。
勇者はまず、自分自身を守る方法から学び始めます。